訴訟代理・裁判所提出書類作成業務( 司法書士業務 )

民事調停手続き

○ 民事調停とは

民事訴訟手続は当事者の主張する事実の有無を証拠に基づいて認定し、 これに法を適用して権利や法律関係の存否を確定し、 公権的な判断により紛争を強制的に解決をします。
これに対し民事調停手続は、 調停委員会を構成する裁判官調停委員が当事者双方の言い分を聞き、 証拠調べや事実を調査したうえ、 法律的な判断を基本におきながら紛争の実情に応じた調停案を提示して当事者を説得し、 主張を互いに歩み寄らして、 当事者の互譲の精神による話し合いにより、 条理にかない実情に即した紛争の自主的解決を図ることを目的とする手続なのです。


○ 民事調停の対象となる紛争とは

民事調停の対象となるべき紛争は、 民事に関する紛争である。


(A) 「民事」に関する紛争

1. 離婚、 婚姻又は離婚の無告または取消し、 父の確定、 認知、 親子関係不存在確認などの人事訴訟手続法上の事件


2. 夫婦の同居その他夫婦間の協力扶助、 婚姻費用の分担、 子の監護、 財産分与などの家事審判法9条乙類に定める事件


3. 相続回復請求、 遺言無効確認、 遺留分減殺請求等の事件がある。 労働紛争のうち、 集団的労使関係の紛争(労働争議)は、 労働関係調整法などにより労働委員会などの斡旋・調停・仲裁の対象となり、 民事調停の対象にはなりません。
しかし、 賃金や退職金の支払請求、 解雇無効などの個別的労使関係の紛争は、 民事調停の対象となります。


(B) 民事に関する「紛争」

貸金、 損害賠償、 建物明渡し等の実体法上の権利・義務に関する紛争が民事調停の対象となることは当然であるが、 民事長の対象になる紛争は、 必ずしも厳格な意味での権利・義務に関する紛争でなくてもより、 例えば、 時効消滅した債権、 書面によらない贈与等、 いわゆる自然債務は訴訟手続によって請求することはできないが、 任意の履行を求めることは可能であるから、 調停による解決を求めることはできると解してよいであろうし、 環境権、 眺望権等未だ成熟したとはいえない権利をめぐる紛争についても民事調停の対象になり得ると考えられるています。

○ 民事調停の流れ

1. はじめに

条理にかなった解決を図るためには、 事実が明確になることが不可欠である。
民事訴訟では、 訴訟資料の収集・提出は当事者の権能かる責任とされる(弁論主義)。
これに対し、 民事調停においては、 紛争の実情の把握するため、 職権調査主義が採用され、 調停委員会は、 当事者が訴訟資料や証拠資料を提出するのを待つまでもなく、 職権で事実を調査することができる。
もっとも、 調停は話合いによる自主的紛争解決の制度であり、 また、 証拠の多くは当事者が持っているから、 当事者が進んで資料を提出するこが望ましく、 実際にも、 多くの資料が当事者から提出されている。
紛争の実情は、 当事者からの事情聴取によって相当程度明らかになるが、 それだけでは十分でない場合もある。
そこで、 法は、 必要な事実を明確にする方法として、 職権で、 事実の調査と証拠調べができることを定めた(民調規12条1項)。


(a) 意義

事実の調査は、 特別の方式によらず自由な手続で、 かつ強制力を用いる方法によらないで資料を収集することをいう。
訴訟手続における証拠調べのように厳格な定めはなく、 当事者等の任意の協力を求めて行われる。
例えば、 当事者や参考人からの事情聴取、 書証の取調べ、 現地の状況の見分、 専門家の意見聴取等である。


(b) 調査の主体および方法

事実の調査は、 原則として、 調停委員会が職権により自ら行う(民調規12条1項)。
もっとも、 法は、 調停主任による事実の調査(同条2条前段)、 調停委員による事実の調査(同条3項)、 裁判所書記官による事実の調査(同条4項)、 他の裁判所に対する事実調査の嘱託(同条2項後段)、 調停委員などによる嘱託に係る事実の調査(同条12条の3)、 官庁等に対する調査の嘱託(同条規13条)等各種の事実の調査を定めて、 幅広く事実の調査を行えるようにしている。
事実の調査においては、 専門的知識経験を備えた調停委員の能力が活かされている。
また、 当該調停委員会の構成員になっていない専門的調停委員の意見聴取制度も定められている(民調法8条、 民調規14条)。実際にも、 例えば、 後遺障害の症状などについて医学的知識を有する専門家調停委員の意見、 建築の瑕疵の有無、 程度、 補修費用等について建築関係の専門化調停委員の意見、 不動産の価格や賃料について不動産鑑定士である調停委員の意見を聞くなど、 専門家調停委員の知識経験が活用されている。


2. 証拠調べ

仮調停委員会は、 必要であると認める証拠調べをすることができる(民調規12条1項)。
証拠調べについては、 民事訴訟法の例による(同条5項)。証拠調べには、 書証の取調べ、 証人尋問、 当事者本人尋問、 鑑定、 検証等がある。
民事訴訟法の証拠調べには、 宣誓や偽証罪の制裁などの厳格な手続がある。
調停は、 話合いによる自由な合意を目的とする制度であるから、 このような厳格な手続を踏む必要のないことが多く、 実際には、 証拠調べより事実の調査のほうが多く利用されている。


3. 調停案の提示

当事者等からの事情聴取、 事実の調査、 証拠調べ等によって、 事実関係が明確になり、 争点や問題点が明確になると、 調停委員会は、 解決の方針を検討し、 調停案を作成することになる。
解決方針の決定は、 調停委員会の評議でなされるのが原則である。
調停は、 条理にかない実情に即した解決を図ることを目的とする制度であるから、 解決方針の決定にあたってよるべき規範は条理(健全な常識、 道理、 社会通念などの言葉で言い表せるもの)ということになる。
もちろん解決案は、 実定法を基本にしたものでなければならない。単に足して2で割るような解決案では説得力がないし、 当事者の信頼も得られない。
調停案は、 事情聴取、 証拠調べ、 事実の調査等によって明らかになった事実関係に、 実体法を適用した法的判断を基礎におき、 条理にかない実情に即したものとして作成されなければならない。
具体的場合に、 何が条理であるかを見定めて、 これに基づいた解決こそが当事者が納得し、 民事調停で求められる紛争解決である。
民法などの実体法規に従った解決が条理にかなった解決であることはいうまでもないが、 実体法規をそのまま適用したのでは妥当な解決が得られないような場合には、 実体法規をそのまま適用しないで、 条理に基づいて解決が図られる。

例えば、 長期にわたる賃料不払いによる賃貸借契約を解除したとして、 建物を引き渡しと未払賃料等の支払を求める場合、 これらの事実が認められれば、 民法の規定により、 賃借人は直ちに建物を明渡し、 未払賃料およびその遅延損害金、 契約解除以降の賃料相当損害金を支払うべき法的義務が認められる場合であっても、 調停においては、 賃貸借契約成立の事情、 当事者双方の事情、 その他事情聴取や事実の調査等によって明らかになった一切の事情の総合考慮して、 条理に基づき、 明渡しの猶予期間を定めたり、 遅延賃料等の一部免除や分割払いを認める等の妥当な解決がなされることが多い。
このような解決は、 家主にとっては、 判決を得て強制執行をしなくて済むこと、 時間はかかっても確実に滞納家賃の回収ができること等のメリットがあり、 賃借人にとっては、 移り住む住宅を探す余裕ができること。
滞納家賃の支払が可能になる事などのメリットがあります。

調停は、 当事者の互譲による自主的な紛争解決制度であるから、 当事者から自主的に解決案が提出された場合、 その内容が条理に照らして妥当なものであれば、 それによって解決すべきである。
しかし、 実際には、 当事者が自主的に解決案を提出することは少なく、 調停委員会が調停案を提示することがほとんである。



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