改正不動産登記法の実務について

登記済権利証について

登記済権利証は、未指定庁においては従来どおり発行されるものの、不発行の申し出ができるようになり、また、オンライン庁に指定されたときは、登記済証制度は廃止されます。
なかには、権利証がなくなることに抵抗を示される方もいらっしゃるでしょうから、権利証の意義と不発行制度の趣旨については十分に説明することが必要です。

登記済権利証は、買主や申請人に登記が完了したことを知らせるとともに、以後、登記義務者となる申請をするときに、その者が、その不動産の所有者であることやその登記申請をする意思が真意に基づくものであることを証明するためのものです。

権利証をなくしてしまっても、所有権がなくなるわけではありません。
つまり権利証の中に権利そのものが付着しているわけではないのです。

次に、不発行制度の趣旨ですが、登記済権利証の性質が

(1)登記完了証明

(2)法務局に対する本人確認・意思確認の手段

とすれば、(1)は登記事項証明書への記載・指定庁においては登記完了証の交付、(2)は事前通知制度や資格者代理人による本人確認制度によって代えることができます。

したがって、権利証が発行されなくても、何の不便もないばかりか、盗難・紛失の心配から解放されることになるのです。
ただし、登記済証制度が廃止されても、すでに発行された登記済権利証が無効になるわけではないので、オンライン庁に指定されても、従来の登記済権利証を添付することによって登記申請をすることができます。
この場合は、事前通知制度や資格者代理人による本人確認制度を利用することなく登記申請ができますので、その意味においては、登記済権利証の交付を受けることも実益があるといえます。

オンライン庁に指定されてからは、権利証に代わり登記識別情報が通知されます。
以後、売却や抵当権設定をするときは、この登記識別情報が②の役割を果たすことになるわけですが、識別情報提供による決済は危険が伴う(失効制度や有効証明制度)ため、司法書士による本人確認制度の利用が主流を占めることになると考えられます。
したがって、登記識別情報の通知を受けても、本人申請をしない限りは実益はないかもしれません。

いずれにしても、登記済権利証に関する現行及び将来の取扱いを説明し、お客様が発行・不発行の選択をするための材料を提供することが必要ではないでしょうか。


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